ネット上の情報や一般的な感覚において、「土は放っておけば自然に湧いてくる無限の資源」という大きな誤解が存在します。しかし土壌科学の視点から見れば、これは極めて危険な認識です。
自然界において、岩石が風化してわずか1センチメートルの表土が生成されるまでには、およそ100年から数百年という莫大な年月が必要です。一方で、不適切な過剰耕起や森林伐採、過放牧によって、その貴重な表土が雨や風で流出するスピードは、生成速度の数十倍から数百倍に達しています。
国連食糧農業機関(FAO)や国際的な研究機関の警告データによると、現在、世界の農地の約3割が深刻な土壌劣化に直面しています。「土壌は石油やレアメタルと同じく、実質的な非再生可能資源である」という事実を知る人は多くありません。土壌保全は、2026年現在の気候変動対策(土壌炭素隔離・4パーミル・イニシアチブ)や生物多様性維持の最重要アジェンダとなっているのです。