からたちの木を象徴する鋭いトゲは、植物学的には「枝が変化したもの」です。原産地である中国の内陸部で、草食動物などの外敵から葉や果実を食べられないよう、自らを進化させて強固な防御壁を築き上げました。その並外れた防衛力から、日本では古くから屋敷や農地の周囲に植える「防犯用の生垣」として大いに重用されてきた歴史を持ちます。
さらに現代の農業において、からたちは「日本の柑橘栽培を根底から支える台木」として決定的な役割を果たしています。からたちは寒さに極めて強く、土壌病害にも耐性があるため、温州みかんやデコポン、柚子などの苗木を育てる際、根元となる台木としてほぼ100%近く活用されています。私たちが普段口にする甘いみかんの実りも、地下でしっかりと支えるからたちの強靭な根があってこそ成り立っています。
詩人・北原白秋が作詞し、山田耕筰が作曲した童謡『からたちの花』では、「からたちのとげはいたいよ/青い青い針のとげだよ」と痛烈な描写が登場します。白秋はこの詩の中で、自身の少年時代の思い出とともに、トゲに守られながら凛と白い花を咲かせ、やがて丸い実を結ぶからたちの姿に、人間の人生における苦難や成長の情景を重ね合わせていたと伝えられています。