「空の声が 聞きたくて」「風の声に 耳すませ」「海の声が 知りたくて」──畳みかけるように連なる自然への問いかけは、単なる叙景詩ではない。会えない相手を思うあまり、自分を取り巻くすべての森羅万象にその面影や声を求めようとする、極めて人間味にあふれた渇望の告白だ。
おとぎ話の浦島太郎といえば、竜宮城の歓楽に溺れて最後には老人になってしまう悲劇の主人公として知られる。しかしこの楽曲で描かれる浦島は、乙姫への届かぬ純愛をひたむきに抱き続ける一人の愚直な男だ。海を隔てて隔絶された二人の世界。携帯電話もメールもない神話的な距離感を埋める手段は、海風に乗せて声を放つこと以外にない。そのもどかしさと狂おしいほどの情熱が、素朴な言葉遣いの中に凝縮されている。
桐谷健太の歌声は、決して技巧に走った美声ではない。だが、掠れや熱情をそのままぶつける泥臭い節回しがあるからこそ、「たとえ声が届かなくても、思い続ける」という太郎の不退転の決意が胸を打つのだ。