主演級キャストの緊急降板という最大の危機に直面した制作陣が、白羽の矢を立てたのが宮沢りえさんでした。連絡を受けた宮沢さんは、膨大なセリフ量と複雑な立ち回りが要求される舞台であるにもかかわらず、「天海さんのためなら」と二つ返事で代役を快諾したと伝えられています。
与えられた準備期間は実質2日足らず。常識では考えられない過密スケジュールのなか、演出の三谷幸喜氏や共演の野村萬斎さんらとともに不眠不休で猛稽古を重ねました。迎えた5月9日の復帰公演、宮沢さんは台本を手にして舞台に上がることなく、完璧に役を自分のものとして演じきったのです。
カーテンコールでは鳴り止まないスタンディングオベーションが巻き起こり、客席だけでなく演劇界全体がそのプロ根性と絆に涙しました。この一件は、日本の演劇史に永遠に語り継がれる「奇跡の代役劇」として今なお称賛を集めています。