田部井進也氏が担う最大の社会的使命といえるのが、母の遺志である「東北高校生富士登山」プロジェクトの継続です。この取り組みは、2011年の東日本大震災で被災した福島・宮城・岩手の高校生たちに「日本一の富士山に登ることで、これからの人生でどんな困難があっても乗り越えられる自信をつけてほしい」という淳子氏の強い願いから2012年に始まりました。
淳子氏は晩年、腹膜がんの告知を受け、抗がん剤治療による激しい副作用と闘いながらも、亡くなる直年の夏まで高校生たちと共に富士山に登り続けました。病床で母から「このプロジェクトだけは絶対に続けてほしい」と託された進也氏は、母の逝去後、プロジェクトリーダーに就任。安全管理の徹底、スポンサー企業の開拓、全国からのボランティア登山ガイドの組織化など、運営体制を抜本的に強化しました。
現在までに参加した東北の高校生は累計1,000人以上を数え、登頂率は9割を超えています。山頂で涙を流しながら抱き合う高校生たちの姿を見守る進也氏の目には、単なるイベント主催者を超えた、次世代の人生に伴走する教育者としての情熱が宿っています。