英語学習者の多くが「This is it」を「これこそが求めていたものだ」というポジティブな意味だけで記憶しがちです。しかし、英語圏のネイティブスピーカーがこのフレーズを口にするとき、その根底にあるコアニュアンスは「待ち受けていた運命の瞬間や決定的な事態が、今まさに目の前に現れた」というリアリティの直視です。
この根底の意味があるからこそ、その「決定的な事態」が好ましいものであれば「歓喜」に転じ、恐れていた事態であれば「万事休す」というネガティブな諦念や覚悟へと180度反転します。
英語イディオム This is itの肯定的な用法では、長年探し求めていた解決策を見つけた際や、理想の物件に出会った瞬間に「まさにこれだ!」「これだよ、これ!」と快哉を叫ぶニュアンスになります。一方、This is itのネガティブな意味では、包囲された映画の主人公が弾切れを起こした際や、大事故の直前に呟く「これで終わりだ」「万事休すだ」「いよいよ年貢の納め時か」という切迫した心理を表現します。
言語学的に分析すると、文頭の「This」は話者の眼前に展開している現実を指し、補語の「it」は話者と聞き手の双方が以前から意識・予期していた特定のイベントや結末を指します。つまり「頭の中で予期していたあの“it”が、目の前の現実である“This”と完全に一致した」という強い確信の表明なのです。