長年一つの名義で活動していた二人ですが、その生い立ちや性格、描き出す世界観は好対照でした。本名や個々のプロフィールを振り返ると、両者のクリエイティビティの源泉が全く異なるアプローチにあったことがよく分かります。
藤子・F・不二雄(本名:藤本弘/1933年12月1日生まれ、富山県高岡市出身)は、物静かで読書や工作を好む生粋のインドア派でした。彼が追求したのは「S(すこし)・F(ふしぎ)」と名付けられた独自の日常SFファンタジーです。平凡な少年の日常に非日常のキャラクターが入り込む構成を得意とし、徹底して子供たちの目線に寄り添う普遍的な温かさを作品に吹き込みました。
一方、藤子不二雄A(本名:安孫子素雄/1934年3月10日生まれ、富山県氷見市出身)は、社交的でゴルフや夜の街を愛する行動派でした。寺の住職の息子として育った背景も影響し、人間の内面に潜むエゴや光と影、狂気を描き出すブラックユーモアに非凡な才能を発揮しました。怪奇調のダークなストーリーテリングや、どこか哀愁漂う大人のドラマを描く力において右に出る者はいません。
コンビ解消直後は「藤子不二雄Ⓕ」「藤子不二雄Ⓐ」と表記を分け、後に藤本氏は友人の石ノ森章太郎氏の助言を受けて「藤子・F・不二雄」へと改名。それぞれが独自の作家として再スタートを切ることとなりました。