1968年、ひとつの大きな決断が世間を驚かせた。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット作に出演し、絶大な人気を誇っていた芦川いづみが、突如として結婚を発表し、同時にスクリーンからの完全引退を宣言したのだ。お相手は、当時まだ若手俳優として頭角を現し始めたばかりの藤竜也。格差婚とも囁かれたこの結婚劇の裏には、世間の喧騒とは無縁の、あまりにも純粋な二人の決意があった。
芦川いづみは、名声に未練を残さなかった。カメラの前で生きる華やかな生活よりも、愛する人と築くささやかな日常を選び取ったのだ。藤竜也は後年、彼女のその潔い決断と深い愛情にどれほど救われ、同時に俳優として男としての責任を痛感したかを語っている。決して派手なセレモニーに彩られたわけではない。だが、彼女の選んだ覚悟は、藤竜也という俳優を大きく飛躍させる原動力となった。