かつて北前船の寄港地として栄えた下関は、近代以降も西日本屈指の水産業の拠点として発展を遂げてきた。近年では国内の旅行者にとどまらず、アジアや欧米からの訪日客が急増し、観光・インバウンド産業の最前線としても脚光を浴びている。多言語のPOPやキャッシュレス決済の導入が進み、国際色豊かな賑わいを見せる。
しかし、唐戸市場が他の観光市場と一線を画すのは、プロの料理人が買い付けに来る「本物の卸売市場」としての機能を堅持している点だ。早朝の仕入れ業務と、昼間の一般向け観光営業。異なる二つの顔を両立させるため、市場内では徹底した衛生管理と鮮度保持のオペレーションが24時間体制で稼働している。
観光地化されながらも失われない魚市場としての泥臭い熱気と職人たちの誇りが、世界中の旅人を惹きつける強力な磁場を生み出している。