湯河原温泉の奥座敷、万葉公園を少し上った高台に位置する「懐石旅庵 阿しか里」は、明治初頭にあたる1868年(慶応4年・明治元年)の創業以来、文人墨客や多くの数奇者に愛されてきた老舗料理旅館です。約二千坪という広大な山林を背負いながら、客室数はわずか19室前後に絞り込まれており、敷地内に一歩足を踏み入れれば、鳥のさえずりと葉擦れの音だけが耳に届く非日常の静寂が広がります。
この老舗宿が近年、感度の高い旅行者の間で再び脚光を浴びている最大の契機が、継続的な客室リニューアルの進展です。従来の重厚な純和風建築の趣を巧みに活かしつつ、現代のライフスタイルに合致したベッドスタイルの和モダン客室や、開放感あふれるウッドデッキを備えた客室露天風呂が順次整備されました。歴史ある宿が抱えがちだった「古さ」「薄暗さ」という弱点を払拭し、機能性と情緒が調和した上質な滞在環境が確立されています。
館内には四季折々の表情を見せる日本庭園が広がり、春の山桜、初夏の瑞々しい新緑、秋の深紅の紅葉、そして冬の静けさと、訪れる季節ごとに全く異なる景観美を堪能できます。歴史の重みに安住することなく、時代に即した快適性を貪欲に取り入れる姿勢こそが、2026年の今なおトップクラスの支持を維持している根本的な原動力です。