タイラー・ザ・クリエイター(本名:タイラー・グレゴリー・オコンマ、1991年3月6日生まれ)のキャリアは、2007年に結成されたロサンゼルスのオルタナティブ・ヒップホップ集団「オッド・フューチャー(Odd Future / OFWGKTA)」の首謀者として幕を開けました。フランク・オーシャンやアール・スウェットシャツらを輩出したこのコレクティブは、インターネット黎明期のDIY精神を武器に、過激な歌詞と不気味なピアノループで既存の音楽業界に殴り込みをかけたのです。
2011年のシングル「Yonkers」のミュージックビデオで見せた生きたゴキブリを食べる演出は、全世界に凄まじい衝撃を与え、MTVビデオ・ミュージック・アワードで最優秀新人賞を獲得しました。当時のタイラーは「恐るべき悪童」としてバッシングと熱狂を同時に集めていましたが、彼自身の手記や当時の特番インタビューでは「世間が貼るショック・バリューのレッテルではなく、コード進行の美しさを聴いてほしかった」という葛藤が吐露されていました。
転機となったのは2017年の名盤『Flower Boy』です。それまでのホラーコア的な毒気を昇華させ、ネオソウルやジャズの要素を大胆に取り入れたコードワーク、そして自身のセクシュアリティや孤独に向き合った繊細なリリックを展開。評論筋からも絶賛を浴び、単なるラップスターから「21世紀の偉大なプロデューサー」へと脱皮を果たしました。