本作に登場する「後ろ戸」が存在する場所は、かつて人々の営みや賑わいがありながらも、時代の変化や過疎化、災害によって打ち捨てられた土地ばかりです。新海誠監督は制作過程において、日本全国の近代化遺産や産業遺構、閉鎖された観光施設を綿密にリサーチし、それらのエッセンスをひとつの架空の舞台へと昇華させました。
物語の起点となる宮崎県の旧温泉街・リゾート廃墟から、四国の山腹に佇む旧中学校の廃校跡、関西の山中にそびえる廃ホテルや朽ちた遊園地、そして最終目的地である東北の被災跡地に至るまで、各シーンのモチーフとなった実在エリアは明確に存在します。ただし、背景美術の多くは「現地そのものの完全再現」ではなく、複数のロケーションの意匠をコラージュした美術設定となっている点が大きな特徴です。