刺身の基本技法として知られる「平造り(ひらづくり)」と「そぎ切り」には、対象とする魚の身質と繊維構造に応じた根本的な違いがあります。魚種に合わせてこの2つを使い分けることが、家庭の刺身をプロの味へと引き上げる第一歩です。
刺身の平造りのコツは、柵に対して包丁を垂直に近い角度(約80〜90度、やや右に傾ける程度)で構え、厚さ8〜10mm前後に一気に引き切ることです。マグロやサーモン、カツオといった身質が柔らかい赤身魚や脂の乗った魚に適しており、厚みを持たせることで魚本来の濃厚なコクと柔らかな食感を存分に堪能できます。平造りを行う際は、柵の右側から順に切っていくことで、切った身が包丁の右側に自然と倒れ、断面を傷めずに連続して切り進められます。
一方、刺身のそぎ切りの違いは、包丁を左側に大きく寝かせ(約30〜45度)、柵の左端から薄く削ぎ取るように切る点にあります。タイ、ヒラメ、スズキといった白身魚の刺身や薄造りに最適です。白身魚はコラーゲン繊維が強靭で身が引き締まっているため、平造りのように厚く切ると「硬くて噛み切れない」という印象を与えてしまいます。包丁を寝かせて表面積を広く、かつ薄く(約2〜4mm)削ぎ切ることで、しっかりとした歯ごたえを楽しみつつ、噛むほどに上品な甘みを引き出すことができます。