冬の日常着として圧倒的なシェアを誇る吸湿発熱インナーですが、スノーボードや登山などのアクティビティにおいて、専門家やプロインストラクターは口を揃えて「着用を避けるべき」と警鐘を鳴らします。その真相は、機能の優劣ではなく素材の物理特性と運動強度のミスマッチにあります。
ユニクロのヒートテックをはじめとする一般的な発熱インナーの多くには、レーヨンという化学繊維が高比率で混紡されています。レーヨンは水分を吸湿して熱を発生させる能力に非常に優れている反面、「一度吸い込んだ水分を繊維内に抱え込み、乾きにくい」という致命的な弱点を抱えています。日常生活での微量な水蒸気であれば心地よい暖かさを維持できますが、スノーボードのように大量の汗をかくシチュエーションでは、繊維の吸水許容量を一瞬でオーバーフローしてしまいます。
雪山において濡れたインナーを肌に密着させ続けることは極めて危険です。水の熱伝導率は空気の約25倍に達するため、汗で飽和した生地は外気によって急速に冷却され、皮膚から猛烈なスピードで熱を奪い去ります。これが汗冷え対策の真相であり、滑走中にどんなに暑く感じていても、リフトに乗って風に晒された途端、急速な寒気と震えに襲われるメカニズムです。最悪の場合、深部体温が低下し運動機能を奪われるリスクすら生じます。