2026年秋以降、スイスの自殺幇助をめぐる環境を一変させる事態が発生しました。オーストラリアの元医師フィリップ・ニチケ氏(団体「ラスト・リゾート」創設者)が開発した、3Dプリンター製の安楽死カプセル「サルコ(Sarco)」がスイス国内で初めて実使用された出来事です。
サルコは、利用者が密閉型カプセル内に入りボタンを押すことで、内部を窒素ガスで満たし、数十秒で低酸素状態に陥らせて苦痛なく意識を失わせる仕組みを持っています。医師による薬剤処方を介さず、AIによる判断能力チェックと窒素ガス放出によって完結するこの装置は、「死の工業化」「過度な簡略化」として強い批判を浴びました。
スイス連邦当局はこの使用に対し、製品安全法や化学物質関連法に違反する疑いがあるとして関係者を一時拘束するなど、異例の強制捜査に踏み切りました。ディグニタスやエグジットといった既存の主要団体も「医師と患者の対話や信頼関係を軽視し、制度全体の社会的信用を失墜させるものだ」としてサルコを厳しく批判しています。この事件を契機に、スイス議会や法曹界では、現行の刑法115条をより厳格化し、医療管理の及ばない新技術の使用を制限する法改正の議論が活発化しています。