親の威光がどれほど大きくとも、舞台の上に立ってしまえばスポットライトを浴びるのは表現者自身の一本立ちした身体と声だけだ。10代半ばで「SAYAKA」として芸能界に足を踏み入れた当時、世間の関心は一様に彼女の出自へと注がれていた。父・神田正輝の端正な面影と、母・松田聖子の才能を受け継いだ少女というレッテルは、時として巨大なプレッシャーとなって彼女に重くのしかかった。
かつて母の所属事務所であったサンミュージックプロダクションをはじめ、周囲からの期待は絶大だった。だが、彼女が選んだのは「七光り」に甘んじる道ではなく、一人の新人としての過酷な修練だった。一時的に活動を休止し、オーディションを自力で受け続ける日々。アンサンブルとしての経験を積み、舞台の端で誰よりも高く足を上げ、声を響かせる下ごしらえの時期を過ごした。この泥臭い修行期間こそが、のちに大劇場をひとりで背負って立つミュージカル女優としての強靭な骨格を形作ったのである。