松田龍平が残してきたキャリアの足跡は極めて多彩だ。映画『御法度』で見せた鋭利な美しさは、年齢と経験を重ねるごとに味わい深い滋味へと変化した。映画『舟を編む』で見せた言葉に没頭する生真面目な辞書編集者の姿や、TBSテレビのドラマ『カルテット』で演じた掴みどころのないヴァイオリニストの日常は、観客の心に深く残り続けている。
人間の可笑しみや悲哀を描き出すヒューマンドラマにおいて、彼の存在は不可欠だ。セリフの間や視線の動きひとつで雄弁に物語を語るそのスタイルは、私生活での様々な経験や葛藤を経て、よりいっそうの奥行きを獲得している。