「妻」という存在をめぐる映像作品は、単なるスキャンダラスな好奇心を満たすためだけのものではない。日本の映像界において、夫婦の肖像は常に人間の根源的な孤独や救済を描くための重要なキャンバスであり続けてきた。
深い喪失感と家族の再生を真正面から描き、国内外で涙を誘った名作『妻、小学生になる。』。あるいは、失踪した夫が幽霊となって妻のもとへ戻る旅路を静謐かつ幻想的に描いた映画『岸辺の旅』。是枝裕和監督が家族の揺らぎや不条理を鋭く切り取る一方で、黒沢清監督は日常のすぐ隣にある狂気と愛の不可解さを独特のタッチで描き出してきた。一見過激に見えるサスペンスドラマから胸を打つ重厚なヒューマンドラマに至るまで、優れた作品群は人間の割り切れない感情を鮮やかに浮き彫りにする。