撮影現場はまさに戦場だった。台風が直撃し、荒れ狂う海と自然の中で行われた和歌山県新宮市でのロケ。わずか17日間という過密日程のなか、菅田将暉と小松菜奈は文字通り命を削って役に没入していた。身体を締め付ける冷水に飛び込み、感情を限界まで揺さぶられるシーンの連続。生傷が絶えない極限状態が、二人のあいだに計算不可能な化学反応を生み出したのだ。
神々しさと危うさを同居させるコウという役に挑んだ菅田将暉は、撮影前に過度な減量を実施。削ぎ落とされた体躯と鋭い眼光は、原作の絵からそのまま抜け出してきたかのような異彩を放った。一方、夏芽を演じた小松菜奈もまた、役と自分自身の境目を失うほどの没入を見せた。互いに「撮影中の記憶が途切れるほど追い詰められていた」と振り返るほどの過酷な撮影現場で培われた信頼関係と緊張感。それこそが、作品全体を貫く凄みと息をのむリアリティの正体である。