もちろん、すべてがノスタルジーのまま保たれているわけではない。駅周辺の耐震化や老朽化に伴う再開発の波は、確実にこの街の地殻変動を引き起こしている。家賃の高騰により、惜しまれつつ看板を下ろした名店も少なくない。
しかし、三茶の店主たちは決して孤立していない。近隣のロースター同士で豆の共同調達を行ったり、互いの定休日に店舗を間借りし合うポップアップイベントを開いたりと、しなやかなネットワークで対抗している。「街の景色を大手チェーンだけで埋め尽くさせない」という静かな意地が、一杯のカップの裏側にしっかりと息づいているのだ。