一方で、すべての死語が単に消滅の道をたどるわけではありません。2026年代以降のY2K(2000年代初頭)ファッションブームや昭和レトロブームの文脈において、一部の死語が「一周回って新鮮でエモい表現」として意図的に再利用される現象が起きています。
例えば、「ナウい」「バッチグー」「ドロンします(退出の意)」といった昭和後期のフレーズは、10代〜20代前半のデジタルネイティブ世代にとって「リアルタイムの古臭さ」を知らないがゆえに、ヴィンテージ古着をまとうような「レトロポップな記号」として面白がられています。Z世代が運営するアパレルブランドのキャッチコピーや、インフルエンサーのショート動画のアクセントとして、あえて死語をコラージュ的に配置するクリエイティブが定番化しています。
ただし、ここで決定的に注意すべきは、若者が楽しんでいるのは「パロディとしての死語」であり、日常の実用言語として受け入れているわけではないという点です。同世代同士のノリとして使うことと、上の世代が「まだ通じる」と勘違いして素で使い続けることの間には、大きな心理的断絶が存在します。