思春期早発症と確定診断された場合、標準的な選択肢となるのがGnRH誘導体製剤であるリュープリン(一般名:リュープロレリン酢酸塩)による治療効果を活用したアプローチです。この薬剤は、脳下垂体に持続的に作用することで性腺刺激ホルモンの分泌を一時的に抑制し、卵巣や精巣からの性ホルモン分泌を「思春期前の状態」までリセットする働きを持ちます。
リュープリンの4週に1回(あるいは持続性製剤による3か月に1回)の皮下注射によって期待できる最大の効果は、「早すぎる骨の老化を食い止めること」です。治療を開始すると、過剰に出ていた性ホルモンが抑えられるため、急速に進んでいた骨年齢の進行スピードが緩やかになります。ここで重要なのは、治療を開始すると一時的に年間の身長増加ペースが落ちるという事実です。年間8〜10cm伸びていたペースが、通常の思春期前のペースである年間4〜5cm程度に落ち着きます。この現象を見て「治療を始めたら背が伸びなくなった」と動揺する親もいますが、これは骨端線が閉じるのを防ぎ、骨が伸び続ける「猶予期間」を延ばしている正常な治療反応です。
臨床データにおいて、思春期早発症の最終身長の予測は、治療開始時の骨年齢と実年齢の乖離、治療開始時の身長によって大きく左右されます。骨年齢が若く、早期に治療を開始できた症例では、治療を行わなかった場合の予測最終身長と比較して、女子で約3〜6cm、男子で5〜8cm程度の最終身長の改善が報告されています。一方で、すでに骨年齢が女子で12歳以上、男子で13歳以上に達している段階で開始した場合、獲得できる身長の上乗せ効果は限定的となります。