健康や美容のためにこまめな水分補給が推奨される一方、過度な水分摂取が思わぬ落とし穴になるケースが多発しています。水だけを大量に摂取した際に発生する頭痛の正体は、医学的には「希釈性低ナトリウム血症(水中毒)」と呼ばれる病態です。
通常、人間の血液中のナトリウム(塩分)濃度は約135〜145mEq/Lという狭い範囲で厳密にコントロールされています。しかし、短時間で腎臓の処理能力(1時間あたり約800ml〜1L前後)を超える真水をがぶ飲みすると、血液が一気に薄まり、ナトリウム濃度が135mEq/L未満へと急落します。これが低ナトリウム血症を引き起こす直接的な原因です。
浸透圧の原理により、薄まった血液から水分が細胞内へと移動します。特に頭蓋骨という硬い骨に囲まれた脳の細胞が水分を吸って膨張(脳浮腫)すると、逃げ場を失った脳内圧が急激に上昇します。この脳圧の上昇が、こめかみや後頭部を激しく圧迫する「耐えがたい頭痛」となって現れるのです。