ボートレーサーたちが繰り広げる「まくり」や「まくり差し」、そして艇首を浮かせて旋回半径を最小限に抑える高度なターン技術。これらは観客を魅了する醍醐味であると同時に、一歩間違えれば致命的な転覆を引き起こす刃でもある。時速80キロで水面にアプローチする際、選手が受ける体感速度は120キロを超えるとされる。そこで艇が風を拾って浮き上がれば、一瞬でコントロールを失う。
水面への叩きつけられ方は陸上のアスファルトへの落下に匹敵し、衝撃で意識を失うケースも少なくない。さらに恐ろしいのは、水中に投げ出されたレーサーの上を、金属製のプロペラが高回転で回る他艇が通過する恐怖だ。旋回時のミリ単位のライン取りが命取りになる構造的なリスクこそが、モータースポーツとしてのボートレースが抱える最大の命題と言える。