出火元と目される正殿内部では、センサーが異常を検知してから警備員が現場に急行するまでに致命的なタイムラグが生じていた。防犯カメラの映像には、正殿内部にうっすらと煙が立ち込めた直後、急激に黒煙が充満し、閃光とともに火柱が立ち上る様子が克明に記録されている。
木造建築特有の「フラッシュオーバー」現象が、初期消火の機会を一瞬で奪い去った。正殿の内部は強固な漆塗り加工が施されており、表面の油分が高熱によって一気にガス化、可燃性ガスが天井付近に滞留した。空気が供給された瞬間に爆発的な延焼を引き起こしたのだ。
さらに、当時のスプリンクラー未設置問題や、屋外ドレンチャーの作動手順における混乱など、複数の構造的死角が重なり合った。夜間警備員の動線、屋内消火栓の放水圧、消防隊の突入ルートに至るまで、初動段階のあらゆるピースが最悪の噛み合わせを見せていた事実が後の検証で浮き彫りとなっている。