映画『夕陽の丘』を語る上で欠かせないのが、ロケ地となった北海道・函館の情景です。映画の舞台として選ばれた函館は、開港以来の歴史が息づく西洋風の建築群、坂道から見下ろす港、そして夕暮れ時に茜色から群青色へと移り変わる独特のトワイライトを湛えていました。
なぜ函館だったのか。そこには、逃亡者である主人公の孤独感を際立たせる「北の港町の終着駅感」と、異国情緒が織りなす「シネマティックな叙情性」が必要不可欠だったという制作陣の狙いがあります。八幡坂や元町の教会群、函館港の波止場など、劇中に登場するロケーションの数々は、二人の哀しい恋のリアリティを何倍にも増幅させました。
夕暮れの港や坂道に佇む石原裕次郎のコート姿は、当時の若者たちの憧れの的となり、「函館=夕陽の丘の切ない舞台」という強烈なパブリックイメージを決定づけたのです。