病院が保険診療を行うにあたり、看護師の配置割合や特定設備の保有、重症患者の受け入れ実績などを定めたルールが「施設基準」です。これを地方厚生局に届出することで高い診療報酬の算定が可能になりますが、基準を1日でも割り込めば遡及して返還を命じられるリスクを常に孕んでいます。2026年度の診療報酬改定においても、急性期病棟の再編や地域包括医療病棟の要件見直し、医療DX推進に伴う実績要件など、施設基準の網の目は一段と複雑さを増しました。
取材に応じた都内200床規模の病院で医事課長を務める関係者は、現場の切迫感を次のように明かします。「厚生局の適時調査で施設基準の不適合を指摘され、数千万円から1億円超の診療報酬返還を命じられて一期で経営危機に陥る民間病院は後を絶ちません。施設基準の管理はもはや事務作業ではなく、病院経営の生命線を握るリスクマネジメントそのものです」。まさにこの防衛機能を担う専門職として、日本施設基準管理士協会が認定する資格の存在意義が急速に高まっています。
これまで多くの医療機関では、医事課のベテラン職員の属人的な知識や経験に施設基準の管理を依存してきました。しかし、相次ぐ改定や職員の退職によって生じる「引き継ぎの空白」が致命的な届出漏れや不正算定を引き起こすケースが多発しています。属人化を排除し、組織全体で体系的に施設基準を順守・最適化する人材育成の共通プラットフォームが求められた結果が、現在の出願ラッシュにつながっています。