離婚後の30代後半から40代にかけて、市毛良枝の人生を根本から変える決定的な転機が訪れます。それが「登山」との出会いでした。
もともとは極度の運動嫌いで、幼少期からインドア派だった彼女ですが、過労とストレスからくる体調不良を改善するために、知人の誘いで山へ足を踏み入れました。その第一歩となったエピソードは、自著エッセイ『山なんて嫌いだった』の中にユーモアと情熱を込めて綴られています。
一歩一歩自らの足で登らなければ頂上に辿り着けない山の世界では、「女優・市毛良枝」という看板も世間の評価も一切通用しません。泥にまみれ、汗を流しながら自然と対峙する体験は、彼女にとって最高の精神的デトックスとなりました。
やがて活動は本格化し、北アルプスや八ヶ岳などの国内屈指の名峰はもちろん、アフリカ最高峰のキリマンジャロ(標高5,895m)登頂にも成功。山を通じて環境保護の重要性に目覚めた彼女は、自然環境保全に関するシンポジウムや環境省関連のフォーラムに登壇するなど、行動派のナチュラリストとして確固たる地位を確立していきました。