ジェンダーロールの解体というテーマにおいて、長編『女たち女たち』が与えた衝撃も計り知れない。男性が存在しない、あるいは男性が徹底的に変容した世界を描いた本作は、過激なフェミニズム文学という単純なレッテルを容易に拒絶する。そこには安易なユートピアなど存在せず、女性だけの社会においてもなお立ち現れる人間臭い滑稽さや権力構造の歪みが、冷徹なユーモアを交えて克明に写し出されている。
日本文学の歴史において、ここまで独自の視点でディストピアを構築し直した作家がどれほどいただろうか。SF文学というジャンルが持っていた男社会的な文脈を鮮やかに解体し、まったく新しい文脈を打ち立てた彼女の手腕は、現代の文壇においても色あせるどころか、むしろ新たな輝きを増している。