2013年、英国の「醜い動物保全協会」が実施したコンテストで1位を獲得して以来、ニュウドウカジカ(英語名:ブロブフィッシュ)の知名度は世界中で爆発的に跳ね上がった。だらしなく垂れ下がった大きな鼻のような突起、悲哀を帯びた口元。その強烈なビジュアルはキャラクター化され、グッズやネット上のジョーク素材として定着していった。
しかし、あの肉体の崩壊は急激な物理現象の結果に過ぎない。深海カジカ科の魚類は、高い水圧に抗うための骨格や硬い肉体を持たず、体組織の大部分が海水とほぼ同等密度の水分に富んだゼリー状物質で形成されている。水深1,000メートルから急激に水圧の低い地上へ引き揚げられると、体内の組織が保てなくなり、自重で風船のように潰れてしまうのだ。つまり、世界を笑わせたあの顔は、水圧奪取という「事故」の痕跡だった。