電気回路において、スイッチをONにした瞬間やOFFにした瞬間に生じる、状態が切り替わる過渡期の物理現象を「過渡現象」と呼びます。コンデンサやコイルを含む回路では、電圧や電流はステップ状に瞬間移動するわけではありません。水槽に蛇口から水を注ぎ込むときのように、徐々に時間をかけて満たされていきます。
この変化のスピード感、すなわち時定数(Time Constant:通常はギリシャ文字の「τ(タウ)」で表記)とは、システムが外部からの入力変化に対してどれほど機敏に、あるいはどれほど緩慢に応答するかを表す物理的な指標です。工学の制御理論においては「一次遅れ系」と呼ばれるモデルの挙動を特徴づける心臓部に位置します。
時定数が小さい回路は、入力に対して極めて鋭敏に反応するため応答速度が速いと表現されます。逆に時定数が大きい回路は、入力の変化に対してゆったりと遅れて反応するため、ノイズのような突発的で高周波の変動を吸収・平滑化する用途に適しています。スイッチのチャタリング防止回路や、電源ラインの平滑回路、スマートフォンのタッチセンサの反応速度調整など、あらゆる実務設計において時定数の制御が品質を決定づけています。