市川團十郎白猿の正しい読み方は、「いちかわ だんじゅうろう はくえん」である。「白猿」を「しろざる」や「はくえい」と読み間違えるケースも少なくないが、音読みで「はくえん」と読むのが正解だ。
なぜ歴史的な大名跡の末尾に「白猿」という落款のような二文字が添えられているのか。その由来は江戸時代の二代目市川團十郎にまで遡る。当時の二代目は、祖父や父といった偉大な先代たちに対し、「自分はまだ名人に及ばない、毛の抜けた白い猿のような未熟者である」という極めて深い謙遜の意を込め、俳名(俳句を詠む際の名乗り)として「白猿」を用いた。
名跡を継ぐ者が自らを誇示するのではなく、芸の道においては常に未完成であり学習者であるという姿勢を示す。十三代目 市川團十郎白猿は、この祖先の真摯な精神を現代に蘇らせるべく、自らの名乗りとして「白猿」の文字を冠することを決断したのだった。