日本国内でラブカが捕獲される代表的な海域が、日本一の深さを誇る駿河湾だ。水深500メートルから1000メートル付近の泥底帯に生息するラブカにとって、浅瀬への移送作業そのものが命がけの旅となる。
網にかかったラブカが海面へと引き揚げられる過程で、急激な水圧低下が起きる。浮き袋を持たないサメ類であっても、血液中の溶存ガスが気泡化するリスクや、組織の間質液の均衡が崩れる危険から逃れられない。また、何百万年もの間、太陽光を浴びずに進化してきた巨大な眼球は、微弱な室内光であっても強い刺激となって網膜を焼く。
水圧の喪失と光の暴露。この二重の負荷が、深海魚の自律神経を破壊し、全身の代謝バランスを崩壊させていく。