なぜ馬車道の一角で、これほどまでに途切れることのない支持が集まり続けるのか。その謎を解き明かす鍵は、看板である勝烈庵 馬車道総本店 ヒレかつ定食(勝烈定食)の調理工程と、門外不出のソースが生み出す味覚の設計にあります。
箸で切れる肉質を生む、職人の「手当て」と特注パン粉
勝烈庵のカツを口に含んだ際、誰もが直面するのが「衣のきめ細やかなサクサク感」と「ヒレ肉の驚愕的な柔らかさ」です。一般的な豚カツは棒状のヒレ肉を輪切りにして揚げるのに対し、勝烈庵では厳選された豚ヒレ肉を綿密に筋切りし、専用の肉叩きで繊維を優しくほぐしながら、独特の四角いブロック状に整えます。
さらに衣には、横浜の名門ベーカリー「ポンパドウル」の前身とも関わりが深い特注の食パンから作られる生パン粉を使用。細挽きと粗挽きを緻密に調整した衣は、澄まし油の中で軽やかに水分を飛ばし、油切れ良く仕上がります。重厚な油っぽさを一切感じさせないため、年配の常連客から胃もたれを気にする世代まで、最後まで心地よく完食できる構造が完成しています。
2日間煮込み、1日寝かせる「勝烈庵 馬車道総本店 秘伝ソース」の真相
肉の仕込みと並び、この店を唯我独尊の存在に押し上げているのが、テーブルに大瓶で置かれた勝烈庵 馬車道総本店 秘伝ソースです。大手調味料メーカーが製造する市販の濃厚とんかつソースとは一線を画し、良質な玉ねぎ、人参、リンゴなどの厳選素材をじっくり2日間煮込み、さらに1日かけて熟成させています。
一般的なソース特有の刺すような酸味や過度な塩分カドがなく、とろりとした舌触りの奥から野菜由来の上品な甘みとコクが押し寄せます。現地で常連客の食べ方を観察すると、カツが見えなくなるほどたっぷりとソースをかけ、さらに山盛りのキャベツにもドレッシング代わりに注ぎ込む姿が目立ちます。カツの衣を湿らせても決してだれず、衣の香ばしさとソースの野菜ペーストが一体化することで、まるで「完成された一つの洋食料理」へと昇華するのです。
口中をリセットする名脇役、濃厚な「しじみ椀」の存在感
定食の完成度を決定づけているのが、漆器の小椀で提供される勝烈庵 馬車道総本店 しじみ椀です。濃厚な赤身の八丁味噌仕立てで、底には粒揃いのしじみが沈んでいます。豚肉の脂と秘伝ソースの甘みが広がった口内を、しじみのオルニチンとアミノ酸が凝縮された赤だしの一杯が引き締め、次の一口への食欲を再び新鮮に掻き立てます。お替わりが効くご飯とキャベツに対し、このしじみ椀が定食全体の引き締め役として機能している点も見逃せません。