生理前の約1週間から数日前にかけて起こる急な体重変化。その主犯格となるのが、排卵後に分泌が急増する女性ホルモンプロゲステロン(黄体ホルモン)です。月経周期において、排卵後から次の生理が始まるまでの期間を「黄体期」と呼びますが、この時期の女性の体内は、受精卵が着床しやすいよう、あらゆる資源を蓄えようとする妊娠準備モードへとシフトします。
ここで知っておくべき生理学的事実は、黄体期体重増加の仕組みの核となる「浸透圧と水分の関係」です。プロゲステロンには、腎臓でのナトリウム再吸収を促す抗利尿ホルモン(アルドステロン)に似た働きがあり、これがプロゲステロン水分蓄積を引き起こします。つまり、皮下組織や血管外の細胞間に通常よりも多くの水分を抱え込んでしまうため、体脂肪が一切増えていなくても、単純に「体内の水分重量」だけで1〜2キロほど体重計の数字が跳ね上がってしまうのです。
さらに、ホルモンバランスの急変は中枢神経系にも直接的な揺らぎを与えます。排卵後にエストロゲン(卵胞ホルモン)が急激に低下すると、脳内の神経伝達物質であるセロトニン(幸福ホルモン)の分泌量が減少します。セロトニンが不足すると脳は精神的な安定を取り戻そうとして、手っ取り早くセロトニン合成を促す「糖質」や「甘いもの」を猛烈に欲するよう指令を出します。これこそが、多くの女性を惑わせる生理前食欲増加の原因です。意志の強さとは無関係に、生存本能レベルの神経化学的反応として食欲のアクセルが踏み込まれているのです。