SNSでの拡散やフォトジェニックな景観が観光誘致の主役となった現代において、三輪山登拝の「撮影禁止」という絶対ルールは、一見すると時代に逆行しているように思える。しかし、現地を訪れる参拝客の満足度はきわめて高い。
レンズ越しに風景を切り取る行為を奪われることで、人間の感覚は研ぎ澄まされる。足元を踏みしめる土の感触、湿り気を帯んだ風の匂い、鳥の声と木々のざわめき。スマホの画面から解放された参拝者は、自分の五感すべてを使って山の気配を受け止めることになる。ある30代の参拝客は「写真に残せないからこそ、その瞬間の光景や気持ちが脳裏に強く刻まれる」と語る。記録ではなく記憶に刻む旅のスタイルが、デジタル社会に疲れが出始めた2026年の旅行者に強く響いている。