蜃気楼現象は、光が曲がる方向と温度層の上下関係によって主に二つのタイプに分かれる。ひとつは、アスファルトの路上や夏の砂漠で見られる「下位蜃気楼」だ。地表面が強い日差しで熱せられ、下層に暖かく密度の低い空気が溜まることで、遠くの風景が下側に反転して映り込む。道路上に水たまりがあるように見える「逃げ水」現象もこれと同質である。
対照的に、より幻想的で観察が難解とされるのが「上位蜃気楼」だ。上空に暖かな空気の層が乗り、海面近くに冷たい空気の層が保持される「逆転層」が形成されたときに姿を現す。光線が下向きに屈折するため、本来は水平線の陰に隠れて見えないはずの遠方の対岸や船が、空中に高く引き伸ばされたり、上下に重なって伸び上がったりして見える。まさに空中に幻の都市が現れたかのような迫力だ。