当時、日本中が注目する中で捜査を進めた兵庫県警察には、凄まじいプレッシャーがかかっていた。「犯人は30代から40代の男性」という当初の見立てが少年Aの急転直下の逮捕によって覆された際、世論は安堵と同時に大きな混乱に包まれた。この初動捜査のブレに対し、鋭い切り口で疑問を呈したのがジャーナリストの一橋文哉をはじめとする調査報道(Investigative Journalism)の担い手たちだった。
取材陣が着目したのは、少年の自白に依存しすぎた捜査手法と、現場付近で複数目撃されていた不審車両や人物の足取りが突如として追跡対象から外れた経緯である。過熱するマスコミ報道の裏で、強引なシナリオ合わせが行われたのではないかという疑念は、徹底した現場取材を通じて繰り返し提示された。客観的な物証と少年の供述の間に横たわる微細なズレを告発し続けたこれらの報道は、警察発表を鵜呑みにしない独立した視点の重要性を社会に突きつけた。