居酒屋の看板メニューとして広く親しまれている「せせり」ですが、その正体は鶏の首(ネック)の骨の周りについている筋肉です。常に頭を動かし続ける鶏の首周りは、全身の中で最も運動量が多い部位の一つに数えられます。
この部位が「焼き鳥の希少部位」と呼ばれる最大の理由は、1羽の鶏から採取できる絶対量の少なさにあります。一般的なブロイラー(可食部約1.5kg〜2kg)から取れるせせりの量は、わずか左右一対で約20g〜30g(全体の約1〜2%未満)に過ぎません。焼き鳥の串に換算すると、1本の串を作るために鶏1〜2羽分の首肉が必要となります。
食肉流通の現場や地域によって呼び名が異なり、精肉店では「ネック」「首肉」と表記されるほか、北海道や東北地方など一部地域では「鶏の小肉(こにく)」、関西圏や業界用語では骨の形状が算盤の珠に似ていることから「そろばん」と呼ばれるケースもあります。
「せせり」という名称の語源・由来は、関西弁の古語・方言である「せせりとる(突いてほじくり出す、穿る)」という動作に由来します。細長い首の骨の複雑な隙間から、包丁や指先を使って肉を丁寧に削ぎ落とす職人の手仕事そのものが、そのまま部位の名前として定着しました。