かつては「湯の温度と手技」に誇りを持っていた職人たちの間にも、劇的な意識改革が起きている。日本屈指の茶鑑定名匠として知られる前田文男氏をはじめとする業界のトップランナーたちも、低温抽出が引き出す未知の香気成分に早くから注目してきた。茶葉の個性を殺すのではなく、別の次元へと昇華させる技術として氷出し緑茶を捉えているのだ。
京都の老舗・一保堂茶舗などの名門でも、極上の玉露を贅沢に氷で抽出するスタイルを提案し、若い世代や海外からの旅行者を魅了している。高級玉露を氷出しにすると、まるで昆布だしや極上のスープを思わせるアミノ酸の奔流が押し寄せる。公益社団法人日本茶業中央会も、消費者のライフスタイルの多様化に応える重要なアプローチとして、新たな冷茶文化の普及を力強く後押ししている。