運命の別れは、あまりにも唐突に訪れました。1989年4月10日、宮城県一関市に滞在中だった色川武大氏は、急性心不全のため60歳で急逝します。知らせを受けた伊集院氏はすぐさま現地へと駆けつけ、眠るような師の亡骸と対面しました。病を抱えながらも最後まで書くことと勝負することをやめなかった無頼の巨匠は、本当に「長いいねむり」についてしまったのです。
師を失った哀しみを乗り越え、伊集院氏は1992年に『受け月』で第107回直木賞を受賞。名実ともに一流作家としての地位を確立していきます。その後も大人の品格を説くエッセイシリーズ『大人の流儀』などで圧倒的な支持を集め続けた伊集院氏の文章の根底には、常に色川武大という不世出の師から注がれた無償の愛が生きていました。2026年11月に伊集院氏が73歳で旅立った際にも、多くの文壇関係者が二人の魂の再会に思いを馳せました。