平成のニュース史に残る船場吉兆の謝罪会見が開かれたのは、2007年12月10日のことでした。福岡市内の百貨店店舗で発覚した無許可での菓子製造や期限偽装、さらには料理の産地偽装問題を受け、大阪市内のホテルで開かれた緊急記者会見場は異様な空気に包まれていました。
当時、社長を務めていた夫の体調不良を受け、取締役であった息子の湯木喜久男氏が代表として登壇。その隣に取締役の前社長として同席したのが湯木佐知子氏でした。緊迫した空気のなか、厳しい追及を続ける記者たちを前に、喜久男氏が返答に窮する場面が訪れます。その瞬間、佐知子氏が息子の耳元へ顔を寄せ、小声で指示を出し始めたのです。
ささやき女将の発言内容は、会場に設置された高性能の集音マイクによって克明に拾われ、生中継やニュース番組を通じて全国のお茶の間に筒抜けとなりました。
- 「頭が真っ白になったと(言いなさい)」
- 「言わんでええ、それは」
- 「違う違う、責任逃れやない」
- 「前向きに受け止めると」
母からの耳打ちを、喜久男氏がまるで操り人形のようにオウム返しでそのままマイクに向かって発言する姿は、視聴者に強烈な違和感と衝撃を与えました。料亭としてのブランド価値はもちろんのこと、大企業の経営幹部としての当事者意識や自立性の欠如を象徴する映像として、連日ワイドショーで繰り返し放送される事態となりました。