三谷大河をめぐっては、時に「軽妙な会話劇ばかりで史実を軽視しているのではないか」「現代劇のようなホームドラマの延長に過ぎない」といった誤解や偏見が語られることがあります。しかし、これらは制作現場の実態とは大きく異なります。
実際には、三谷幸喜は「時代考証学会や歴史学者との綿密なディスカッション」を何重にも重ねた上で脚本を執筆しています。例えば『鎌倉殿の13人』では、鎌倉幕府の公式記録『吾妻鏡』の記述を徹底的に精読し、「なぜこの記述が残されたのか」「誰が都合よく記録を改ざんしたのか」という史料批判の視点を作劇のコアに組み込みました。
現代的な分かりやすい言葉遣いやコミカルなやり取りは、史実を歪めるためではなく、遠い時代の人物たちが「今を生きる私たちと同じ血肉の通った人間であった」という実感を手渡すための計算された演出手法です。表層のポップさの裏側に、極めて学術的で硬派な歴史解釈が張り巡らされている点こそが、識者からも絶賛される真の理由です。