そもそも、えんがわとは魚の標準和名ではなく、魚の特定の「部位」を指す通称です。魚が大海を泳ぐ際、背ビレや尻ビレを細かく波打たせて推進力を生み出します。このヒレの根元を支え、絶え間なく動かし続ける強靭な筋肉群こそが、寿司ネタとしての「えんがわ」です。
解剖学的には「担鰭骨(たんきこつ)周辺の筋肉(ヒレ支持筋)」と呼ばれ、常に激しく動かす部位であるため、繊維が緻密に発達しています。これが、口に入れた瞬間のあの小気味よいコリコリとした歯ごたえを生み出す理由です。
名前の由来は非常に明快で、ヒレの付け根に沿って細長く帯状に伸びる肉の形状や、切り分けた際の筋目の美しさが、日本家屋の「縁側(えんがわ)」の板目に酷似していたことから名付けられました。江戸前寿司の職人たちが粋を利かせて呼んだ符丁が、そのまま一般的な名称として定着した歴史を持ちます。