全国の八幡神社が武運の神として八幡大神(応神天皇)を主祭神とするのに対し、若宮八幡神社の祭神には主にその御子(若宮)である仁徳天皇(大鷦鷯尊 / おおさざきのみこと)が祀られています。また、本宮から新しく神霊を分祀した「若々しい御分霊」を意味するケースもあり、いずれも本宮との強い血脈・神威の継承を象徴しています。
仁徳天皇といえば、高台から民家の煙が立ち上っていないのを見て貧困を察し、3年間にわたって宮殿の屋根の修理を取りやめ、民の課税や労役を免除した「民のかまど」の逸話で広く知られる名君です。この仁徳の精神が根底にあるため、若宮八幡神社の歴史と由緒を紐解くと、民衆の生活を守り、産業や家庭の安寧を願う庶民信仰と深く結びついて発展してきた経緯が見て取れます。
武家が台頭した中世以降は、源頼朝をはじめとする源氏一門が鎌倉の鶴岡八幡宮境内に若宮を創祀したことを契機に、全国各地の武将や領主によって崇敬が拡大しました。国家鎮護の厳格な武神信仰と、民衆を包み込む慈愛の神徳が融合した独自の信仰体系こそが、今日まで人々を引きつけ続ける根本的な理由です。