現代の食品工業において、乳化剤の担う役割は単に水と油を混ぜ合わせるだけに留まらない。パンの生地にしなやかさを与えて老化(パサつき)を防ぐ、チョコレートの表面に白い粉が浮き出るブルーム現象を抑制する、アイスクリームの口溶けとなめらかな泡立ちをコントロールするなど、その用途は多岐にわたる。中でも、植物油脂から合成されるグリセリン脂肪酸エステルは、その優れた汎用性と安定性から、加工食品の製造現場で最も広く採用されている代表格だ。
一方、化粧品産業にとっても乳化剤は製品の骨格を成す不可欠な素材である。水分と油分が絶妙なバランスで配合されたクレンジングオイル、保湿乳液、ファンデーションなど、製品の肌触りや伸びの良さ、保存安定性を保つためには高度な乳化技術が欠かせない。テクスチャーの質感を左右するだけでなく、美容成分を角層まで届けるキャリアとしての機能も期待されている。