旅行者の間で飛び交う「抱っこ体験の終了」という情報は、紛れもない事実です。同園は2026年半ばをもって、来園者がコアラを腕に抱きかかえて撮影する「コアラ・ホールド(Koala Hold)」プログラムを公式に廃止しました。長年、園の代名詞として世界的な集客を支えてきた看板コンテンツを取りやめた背景には、世界的な動物福祉基準の厳格化と、来園者側の意識の劇的な変化が存在します。
同園のジェネラルマネージャーであるリンドン・フレイザー氏は、方針転換に際して「来園者の声に耳を傾けた結果、動物を抱きかかえることよりも、彼らが自然な環境でストレスなく過ごす姿を間近で観察したいという要望が圧倒的多数を占めるようになった」とメディア向けに明かしています。コアラは本来、1日の大半を眠って過ごし、人間との物理的接触によって心拍数の上昇などストレス反応を示す繊細な有袋類です。営利的なふれあいよりも保護区(サンクチュアリ)としての原点に立ち返る判断が下されました。
ここで多くの旅行者が混同しているのが、クイーンズランド州におけるコアラの抱っこに関する法律との関係です。オーストラリアでは、ニューサウスウェールズ州(シドニー)やビクトリア州(メルボルン)など多くの州でコアラの抱っこが州法により全面禁止されています。これに対し、クイーンズランド州の現行法では、1頭あたりの接触時間を厳しく制限(1日30分以内、週3日以内など)した上で、認可施設での抱っこを依然として合法と認めています。つまり、今回の抱っこ中止は行政処分や法改正による強制ではなく、ローンパインコアラサンクチュアリが独自に下した決断という点が決定的な事実です。