日本産業規格(JIS)や日本溶接協会(WES)の基準において、オーバーラップはどのように審査されるのか。結論から言えば、一般的な構造設計においてオーバーラップは原則「不合格(許容値なし=0mm)」と規定されています。
一例として、金属材料の溶接部外観検査基準に準拠する規格体系(JIS Z 3400シリーズや国際標準ISO 5817の判定区分)を参照すると、許容値の厳しさが如実に表れています。
- 厳格クラス(レベルB / 圧力容器・橋梁・新幹線車輌等):オーバーラップは一切許容されず(許容値=ゼロ)。検出された時点で直ちに不合格判定となり、是正処置報告書の提出が求められます。
- 標準クラス(レベルC / 一般構造用建築鉄骨・産業機械フレーム等):原則不可(h ≦ 0)。止端部の移行角が滑らかであることが大前提であり、ノッチ状の重なりと判定されたものはすべて手直し対象となります。
- 緩和クラス(レベルD / 短期仮設材等):一部の非安全重要部材に限り極小の不整が黙認される例外規定はあるものの、国内の主要建築確認検査や受入検査では「外観欠陥の是正」が指示されるのが実情です。
外観検査員は検測器(溶接ゲージ)を用いてビード幅や余盛高さを測るとともに、ルーペや触診針(ニードル)、ならびに浸透探傷試験(PT)を併用して止端部をチェックします。止端部のビード立ち上がり角度(θ:フランク角)が直角(90度)を超え、母材に覆いかぶさっている状態が確認された瞬間、どれほど正規の脚長を満たしていようと自動的にリジェクト(是正命令)が下るのです。