医療従事者にとって、この症候群を見破るのは至難の業だ。現代の患者家族は医学論文やSNSの専門家コミュニティから高度な情報を簡単に手に入れられるため、疾患の症状を臨床的に正確に再現できてしまう。体温計の偽造、検体への血液混入、処方薬のすり替えなど、手口は極めて精巧だ。
さらに、医師側にも「親が子どもを故意に痛めつけるはずがない」という心理的バイアス(思い込み)が働く。不必要な検査や投薬、時には手術までが行われ、医療事故に類似した状態が意図的に作り出される。複数の病院を渡り歩く「ドクターショッピング」を繰り返されると、個々の病院では全体像を把握できず、発見が数年単位で遅れることも珍しくない。