食品表示で目にする「リン酸塩(Phosphate)」とは、鉱物やリン鉱石などから化学的に合成されるリン酸と、ナトリウムやカリウムなどの塩基が結合した化合物の総称です。主に「リン酸三ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」「ピロリン酸ナトリウム」など多種多様な形態があり、食品業界ではまとめて「リン酸塩(Na)」などと表記されます。
そもそも「リン」自体は、カルシウムに次いで人体に多く存在する必須ミネラルの一つです。成人の体内には約800g前後のリンが存在し、その約85%は骨や歯を形成し、残る15%は細胞膜やDNA、エネルギー代謝の要であるATPの構成成分として生命活動を支えています。リンそのものは人間が生きていく上で絶対に欠かせない栄養素です。
では、なぜこれほどまでに「危険」「体に悪い」と警戒されるのでしょうか。その決定的な理由は、肉や大豆などに元から含まれる「有機リン」と、添加物として配合される「無機リン」の吸収特性の圧倒的な違いにあります。
天然の動植物に含まれる有機リンはタンパク質などと強く結合しているため、消化管内での分解に時間がかかり、体内への吸収率は約40%から60%にとどまります。これに対し、食品添加物として投入されるリン酸塩などの無機リンは水に溶けやすく、イオンとして遊離しているため、摂取すると約90%から100%がダイレクトに吸収されてしまいます。現代の加工食品漬けの食生活では、本人が自覚しないうちに血中のリン濃度が急上昇しやすい環境が作られているのです。